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車検とは

2021.01.04

日本では公道を走る車は車検を受けないといけないと法律で定められており、車検という言葉は一般の方にも浸透しています。そもそも車検とはどういう位置付けで何を行うものなのでしょうか?
今回は、車検に関する法的な定めや受検する際に必要となる書類、費用の内訳などについて詳しく解説いたします。

自動車検査登録制度と車検

車検とは

自動車検査登録制度とは道路運送車両法に基づき自動車の登録と定期的な検査を定めたもので、車検とは一般的には、その制度において自動車検査証(車検証)の有効期間満了後も引き続き使用する場合に行わなければならないとされている継続検査を指します。車検は対象の自動車に定期的な検査を実施して安全性に問題がないかチェックするものです。

継続検査以外の検査としては、新車や一度登録抹消した車両を再び公道で走行させる場合の新規検査、車高や最大積載量、用途の変更といった車両の構造をカスタマイズした際に受ける構造等変更検査があります。

車検の対象となる自動車は排気量250cc以下の軽二輪車および小型特殊自動車を除く車両です。車検を受けず有効な車検証が交付されていない車両は原則的に公道の走行が認められていません。

車検証の有効期間は車種によって異なり、例として軽自動車を含む自家用乗用自動車は初回における有効期間が3年ですが、2回目以降の有効期間は2年に短縮します。

一方、人員の輸送を行うバスやタクシーに加え、大型の普通貨物自動車といった一部の車両は初回・2回目以降を問わず車検証の有効期間が1年です。

車検の対象となる小型二輪車および普通・小型自動車、軽自動車は、運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会)のほかに運輸局長から認証・指定を受けた民間の自動車整備業者にて受検できます。

無車検運行の刑罰は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

車検の有効期限が失効している車両を公道で運転した場合は無車検運行による道路運送車両法違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に併せて違反点数6点が累積されます。 さらに車検を受けた際は自賠責保険の加入が法律によって義務付けられているため、車検の有効期限が失効している場合は自賠責保険の有効期限も失効しているケースがほとんどです。

自賠責保険の有効期限が失効している車両を公道で運転した場合は無保険運行による道路運送車両法違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に併せて違反点数6点が累積されます。 ただし無車検運行および無保険運行を同時に行った場合の違反点数は12点が累積される仕組みではなく、道路交通法施行令が定める累積方式に則り一方の6点だけが累積されるのです。

車検は有効期限満了日の1ヶ月前以内に受けるのが一般的

車検はいつでも受検可能であり、例として車検を受けた月の翌月でも再度受検できます。 しかし費用の面からこのように短期なスパンで車検を受けるドライバーは少なく、長期の入院や出張でタイミングが合わない場合などを除いて有効期限満了日の1ヶ月前以内に受けるのが一般的です。 車検は有効期限満了日の1ヶ月前以内に受検することで有効期限をロスせず引き継げます。

例えば自家用自動車で車検の有効期限が2020年4月1日であった場合、満了日1ヶ月以上前の2020年2月1日に車検を受けると次の有効期限満了日は2年後の2022年1月31日となります。つまり2ヶ月分の有効期限ロスが生じている計算です。 一方で有効期限満了日から1ヶ月前以内の2020年3月15日などに車検を受けた場合は有効期限の余剰分が補完され、次の有効期限満了日が2022年4月1日になり、2年周期における有効期限のロスが生じません。

もちろん満了日の前日や当日でも車検の手続きを行うことは可能ですが、受検希望者が多く混み合っていると有効期限以内に車検を受けられないことがあります。 そのため、車検の手続きを行うタイミングは、余裕を持って有効期限満了日の1ヶ月前以内から2週間前ほどを目安にして受検しましょう。

受検時は自動車検査証・自賠責保険証明証・納税証明書が必要

自動車整備業者などで継続検査(車検)を受ける際は必要な書類が3点あり、これらが用意できないと車検を受けられません。
(納税証明書は令和5年1月より原則提示不要となりました。※1)

受検時は自動車検査証・自賠責保険証明証・納税証明書が必要

1. 車検証

車検証は正式には自動車検査証といいます。車両を新車で購入した際および前回の車検を受けた際に発行される書類であり、車両番号や使用者・所有者の氏名と住所といった内容が記載されています。 車検証は自動車を公道で走らせる際に常備しておく必要があり、検査標章(車検ステッカー)は車両のフロントガラスに貼らなくてはいけません。

車検証の携帯および検査標章の表示を怠って公道を走行した場合、道路運送車両法に則り50万円以下の罰金が科せられることがあります。 紛失した時は運輸支局または軽自動車検査協会にて再発行を申請しましょう。

2. 自賠責保険証明証

自賠責保険証明書とは正式には自動車損害賠償責任保険証明書といいます。車両の持ち主が自賠責保険に加入していることを証明する書類です。本書類を所持せずに公道を走行すると無保険運行とみなされてしまうので注意しましょう。 自賠責保険は車検を受けるに際して併せて加入・更新する義務があり、自賠責保険証明書には車両番号や加入者の氏名および住所などが記載されています。

車検の手続きを行う際は自賠責保険証明書の内容がチェックされますが、本書類に不備があると車検証が交付されません。
自賠責保険証明書に不備があった場合や紛失した際は、加入している保険会社に再発行を申請しましょう。

3. 納税証明書

納税証明書とは正式には自動車税納税証明書といいます。自動車税管理事務所または各地域の税事務所(軽自動車は各市町村役場)が年に1回発行・郵送する書類で、車両の持ち主が自動車税を納付していることの証明書です。 納税証明書を紛失した場合は車検証・登録名義人の印鑑を持参し、自動車税管理事務所または税事務所(軽自動車は各市町村役場)で再発行を申請しましょう。(※1)

納税証明書は携帯せずとも公道の走行が認められており、一定の要項に該当しない場合は電子確認によって車検の手続きを行う際に紙媒体での提示を省略できます。 電子確認ができない一定の要項とは「自動車税を納付していない車両」と「自動車税を納付してから間もない車両」で、これらの要項に該当する場合は車検の手続きを行う際に紙媒体の納税証明書を提示しなくてはいけません。(※1)

費用の内訳は法定費用・車検基本費用・パーツ交換費用の3つ

費用の内訳は法定費用・車検基本費用・パーツ交換費用の3つ

車検を受ける際は、法律によって定められた費用のほかに業者や車両のコンディションなどによって金額が異なる費用が発生します。 そのため複数の業者を比較し、サービスや価格など自身が重視するポイントを満たした業者を利用しましょう。車検(継続検査)を受ける際にかかる費用は次のとおりです。

1. 法定費用

車検における法定費用とは基本的に重量税・自賠責保険料・印紙代をまとめた費用を指し、各項目の金額は法律によって車種ごとに定められています。 そのため車検を受ける業者次第で金額が変動するといったことはありません。自家用普通・小型乗用車における車検(継続検査・OSS申請の場合)の法定費用は次の金額です。

  経過年数
重量税 車両重量 13年未満 13年以上 18年以上
〜0.5t以下 8,200円 11,400円 12,600円
〜1.0t以下 16,400円 22,800円 25,200円
〜1.5t以下 24,600円 34,200円 37,800円
〜2.0t以下 32,800円 45,600円 50,400円
〜2.5t以下 41,000円 57,000円 63,000円
〜3.0t以下 49,200円 68,400円 75,600円
自賠責保険料(24ヶ月分) 一律20,010円
印紙代(指定工場) 一律1,600円

上述の表を見てのとおり、法定費用において一定期間の自賠責保険料および印紙代(指定工場)の金額は一律です。しかし重量税は車両重量が重いほど、かつ経過年数が経っているほど高額になります。ただしエコカー対象車両である場合、適用期間内に新車登録を行うことで重量税を減税可能です。エコカー減税は燃費基準の達成レベルによって一定の減税が適用され、電気自動車を筆頭とする次世代自動車は重量税が100%減税(免税)されます。

2. 車検基本費用

車検基本費用とは、消耗品の交換や追加整備費用を除いた車検での24ヶ月定期点検費用や車検の代行手数料などといった車検を依頼する業者に支払う基本的な費用を指し、法律による金額の定めはありません。さらに車検を行う事業者側の利益分も車検基本料の項目に含まれているため、金額はディーラーや民間の自動車整備工場といった車検を受ける業者によって異なります。

24ヶ月定期点検(法定点検)では点検項目が57項目設けられており、原動機(エンジン)や制動装置(ブレーキ)の摩耗および損傷など車の各部の状態を確認します。道路運送車両法によって自動車は公道を安全に走行するために定期的な点検を受けることが義務付けられており、整備工場で車検を行う際には法定点検を実施する必要があります(ユーザー車検を除く)。法定点検の費用は車種や排気量などによって変動し、部品交換の必要性が生じるケースもあります。

ユーザー車検では車検時に法定点検を実施しなくても罰則はありませんが、メンテナンスを怠ると走行中に機器の不具合や故障が生じて事故を起こすリスクが高くなるため危険です。法定点検を受けることで故障や不具合の発生を防止できるため、車検の手続きを行う際は法定点検も併せて行いましょう。法定点検はドライバー自らが行うことも可能です。ただし法定点検の中にはブレーキなどの分解も含まれるため整備に関する知識が求められるので十分な注意が必要です。

3. パーツ交換費用

パーツ交換費用は法定点検を受けた際に車両の装置・機器における摩耗や劣化が見つかり、パーツの交換を実施するケースで必要となる費用です。車両は走行距離がかさむほどパーツの摩耗や劣化が進行しやすいため、年式の古い車両や走行距離が多い場合は一度に複数のパーツを交換する必要性が生じるケースも少なくありません。

車検基本費用とパーツ交換費用は別途であり、車検を受ける業者のホームページなどで示されている車検基本費用は基本的にパーツ交換を行わない場合の金額です。そのため車検基本費用がリーズナブルだったとしても、交換するパーツが多いほどトータルコストは多額になるので注意しましょう。

パーツ交換の必要性はメーカーごとの品質や車両の使用状況などによって頻度に差がありますが、エンジンオイルやブレーキオイルといった消耗品は継続検査で法定点検を受けるごとに交換するケースが一般的です。走行距離が10万kmを超えた場合は多くの消耗品およびパーツが寿命を迎えるタイミングであるため、業者に交換を勧められた場合は摩耗・劣化の状況を教えてもらい、次回の継続検査までに不具合や故障が起きそうな場合は交換しましょう。

軽自動車は車検時の重量税が安く抑えられる

軽自動車は自動車検査登録制度(車検)の重量税が安く抑えられる

普通・小型自動車および軽自動車はそれぞれ経過年数に応じて重量税が増額する点は共通ですが、普通・小型自動車は車両重量500kgごとに重量税が増額する一方で、軽自動車は車両重量による増額がなく一律です。

そのため軽自動車は車検を受ける際に発生する法定費用の重量税を安く抑えられます。普通・小型自動車と比較して軽自動車の重量税は次のように一定期間フラットであり、重量税が安価に設定されています。自家用軽自動車における車検(継続検査・OSS申請の場合)の法定費用は次の金額です。

  経過年数
13年未満 13年以上 18年以上
重量税 8,200円 11,400円 12,600円
自賠責保険料(24ヶ月分) 一律19,730円
印紙代(指定工場) 一律1,600円

例として新車購入から15年経過している車両重量1,200kgの普通・小型自動車である場合、車検で2年ごとの継続検査を受けた際に発生する重量税は34,200円です。一方で同条件における軽自動車の重量税は8,200円であり、普通・小型自動車と比べて26,000円も安価となります。軽自動車は継続検査の重量税が最大8,800円であるため、車検の費用を抑えたい場合は軽自動車の所有がおすすめです。

ユーザー車検は自分で車両を持ち込んで車検を受ける方法

ユーザー車検は陸運局に車両を持ち込んで車検を受ける方法

ユーザー車検とは自動車の持ち主自らが車両を運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会)に持ち込んで車検を受ける方法で、設けられた検査項目をクリアすることで車検を通すことが可能です。ユーザー車検は運輸支局などにて事前に予約が必要ですが、ユーザー車検をクリアできれば業者に車検を依頼した場合よりも費用を抑えられます。

ただしユーザー車検を受けて車両に不具合があった場合は検査不合格となり、車検を通すことができません。
そのため受検前に

*フロントガラスや各ライト類・室内のメーターパネル表示灯といった外装・内装
*および下回りのマフラーやドライブシャフトといった装置・機器

が適正な状態かつ動作を行うか確認しておきましょう。 本番で行う検査と同等の検査を事前に受けられる有料の予備検査場(テストセンター)は、各運輸支局などによって併設の有無や利用できる対象が限られていることがあります。

ユーザー車検は平日に検査場内を運転して受ける流れになっている

ユーザー車検を受ける際は運輸支局などの窓口に検査申告書や自賠責保険証明書といった必要書類を提出し、重量税および検査手数料を支払います。検査の受付を済ませた後に自動車の持ち主自らが車両を運転し、検査場内を移動しながら外観検査やブレーキ検査といった各検査項目を受検するという流れです。すべての検査項目で不具合がなく審査結果通知欄に印鑑が押されたらユーザー車検合格となり、窓口にて新しい車検証および検査標章が発行されます。

検査で不具合が見つかった際は該当項目の整備を行い、再検査を受検しましょう。当日であれば2回まで再検査は可能です。当日整備ができない場合でも、限定自動車検査証を発行してもらい、有効期間の15日以内であれば以前適合した検査項目を省略して検査を受検できます。ただし、限定自動車検査証の有効期間内に受検できなかった場合は再びすべての検査項目を受検しなくてはいけません。さらに運輸支局などは土日および祝日の営業を行っていないため、ユーザー車検の受検は平日に限られている点に注意しましょう。

ユーザー車検については「車の知識があれば自分で車検が出来る?ユーザー車検を行うための準備と流れを解説」で解説しています。

車検は車両の故障・事故を防ぐために必要

車検は車両のコンディションを整えて故障や事故を未然に防ぐために必要な制度です。自動車整備士のように専門的な知識・技術を持っていない場合は小さな不具合を見逃してしまうことがあるため、ユーザー車検を行う場合は次回の車検で業者に依頼してプロの目で検査してもらい、安全性に問題がないかチェックを受けましょう。 定期的に業者で車検を受けることで故障や事故の発生リスクを抑制でき、自動車の寿命を伸張できます。


※1 令和5年1月より、軽自動車も含めた自動車税の納税確認が運輸支局等で電子的に出来るようになったため、車検時の自動車税納税証明書の提示が原則不要となりました。
ただし、次のような場合などには電子的な確認ができず、紙の納税証明書が必要になる事がありますので、納付後の納税証明書は保管いただき、車検時にはお持ちいただく事をお勧めします。

・以前の自動車税や延滞金が未納となっている場合
・自動車税を納付してから2~3週間(市町村窓口で納付した場合は最大2ヶ月)以内に車検を受ける場合

上記のような場合で紙の納税証明書が無い際は、事前に普通車は都道府県税事務所、軽自動車は各市町村役場に納税証明書の再交付が出来ないか、お問い合わせください。
また、中古車を購入または名義やナンバーを変更してから翌年度の納期限までの間に車検を受ける際も紙の納税証明書が必要になる場合があります。