Column 速太郎コラム

車検制度が生まれた歴史背景

2021.11.03

少し目的は異なりますが、日本で車検制度が始まったのは1903年です。また、それ以前にも馬車や牛車が一般的だった時代から、乗り物を取り締まる取り組みがありました。早速車検制度が生まれた背景を、順番に追っていきましょう。

日本の車検制度の歴史とその背景

現在の車検制度が適用されたのは1951年です。自動車の安全性を確保するために行う検査のほか、自動車の登録、整備の要素も盛り合わせ、自動車を管理するために制定されました。

しかし、車検制度の始まりは1903年までさかのぼります。本章では車検の歴史と、現在の車検制度に至るまでの背景をご紹介します。

車検制度の歴史年表

車検制度の歴史年表

現在のような車検制度は、1951年に初めて制定されました。しかし、1951年以前から車検に関する法律があり、現在とは少し違った目的をもって車検の義務が課されていました。

日本で最初に自動車に対する検査制度を開始したのは、1903年に愛知県が公布した、乗合自動車営業取締規則によるものです。

現在の車検とは異なり、蒸気自動車を乗合自動車として用いる事業を取り締まるために制定されていました。

同年の終わり頃には、自動車を使った運送事業が各地でスタートし、それにともなって自動車取締規則を制定して許認可制をスタートしました。この頃は営業用や乗合用の自動車が対象で、一般の自動車には検査義務がなかったのが特徴です。

上記同様に事業を取り締まる取り組みは馬車や牛車を使っていた明治初期からあり、当時から事故を起こさない、通行人の妨げにならないなどの規定を定めています。愛知県を筆頭に始まった自動車取締規則ですが、もともと馬車・牛車が普及していた地域は規則の適応が早かったといいます。

1907年になると、警視庁が自動車取締規則を新たに公布し営業や乗合のくくりがなくなって、自家用自動車にも規則を設けるようになりました。取り締まりをより強化するために車体番号を記載するようになったのも同年です。

車体番号はアメリカのニューヨーク州やカリフォルニア州の規則にならって導入されました。

1919年には内務省が全国の自動車取締規則と自動車の検査規則を統一する、自動車取締令を制定し、警察が現在と同じように道路上での取り締まりを始めます。

また

最高速度
営業車と自家用車の区別
検査
車両番号
運輸営業
運転免許証
事故の罰則
の規定も始まり、自動車は定期的に検査を実施するよう義務付けらました。

1933年の小型自動車の規程作成に続き、1945年には政府の内部改革によって道路交通取締法と道路運輸法が整理されています。また1947年には、現在も重要視されている検査、整備、登録が義務付けられました。

そして現在の車検制度に近い、道路運送車両法が1951年に制定され、その後は法改正の回数が数十回に及んでいます。

ちなみに、1952年の時点では軽自動車は車検を免除できるとしていましたが、軽自動車の普及にともなって、1973年には軽自動車も車検対象として厳格化されました。

車検制度の始まりから1978年までの歴史年表まとめ

ここまで紹介した1903年から1978年までの年表を一覧でご紹介します。

1903年:乗合自動車営業取締規則(愛知)
同年:自動車取締規則・車体番号の管理開始(日本の一部地域)
1919年:自動車取締令(内務省)
最高速度、営業車と自家用車の区別、検査、車両番号、運輸営業、運転免許証、事故の罰則を規定
警察による道路上での取り締まり開始
1933年:小型自動車の規定作成
1945年:道路交通法と道路運輸法に整理
1947年:自動車の検査、整備、登録を義務化
1951年:道路運送車両法を制定
1952年:軽自動車を車検から免除(営業車を特に厳しく取り締まっていた)
1973年:軽自動車も車検の対象になる
ポイントは車検の始まりが主に営業車や乗合用の自動車限定だったことです。当初は自家用車が少ない状態でしたが、急速に数保有台数が増えて車検制度の見直しを行ったとしています。

また、車検が始まった当初は事業を管理する目的が大部分を占めていましたが、次第に自動車を検査、整備、登録する目的に移り変わっていった点も特徴的です。

車検制度は事故被害者救済の側面も見えてきた

車検制度が1951年に始まった後、日本での自動車の保有台数の急激な増加による自動車事故の増加から何度も法改正や提案が重ねられ、1955年には自賠責保険の加入が義務化され、車検時に更新していく形となっていきました。また1973年の軽自動車への車検制度導入に合わせて、軽自動車の自賠責保険加入も義務となりました。

環境の変化に合わせて車検内容も変化してきた

現在は自家用車であれば、定期的かつ短周期で行う車両点検が推奨されるようになり、また車検もさまざまなサービスから選べるようになっています。

自動車が急速に普及した状況と自動車の性能・品質向上、道路網の舗装・改良などの整備を鑑みて、1955年の法改正で車検時の点検箇所が102項目から60項目まで大きく減らされました。さらに車検に関する規則を緩めたことで、ディーラーや整備工場以外の場所でも車検が行えるようになりました。

車検を行う意味と車検にかかる費用や時間

車検の歴史や制定された背景を学んできましたが、車検には確かな意味があります。構造が複雑な自動車は、定期的に細かい確認を行わなければ安全性が確保できません。

安全性が欠けた自動車は万が一の際に、自分だけでなく歩行者や周囲を走る自動車を巻き込み、重大な事故に発展するかもしれません。もしくは、急に自動車が止まってしまい、立ち往生により道路渋滞を起こしてしまうかもしれません。

現在でもほとんどの自動車は燃料(ガソリンや軽油、LPGなど)を燃焼させるエンジンで走行しており、メンテナンス不良による排気ガス中の有害物質により大気汚染などの公害を引き起こす原因にもなってしまうのです。

以上のような事態を防ぐために車検制度があります。
日常点検と呼ばれるように、自動車を使う前に自分で簡単なチェックを行い、不調・故障している部分を把握するのも大切です。

車検は2年に1回(自家用乗用車は新車購入時初回のみ3年目、貨物車は1年に1回)の頻度で行いますが、その次の車検まで故障しないことを補償するものではありません。車検に加えて、定期的な点検も欠かさないようにしましょう。

車検にかかる時間と費用

現在車検を行えるのは自動車整備工場やディーラー以外にも、カー用品店やガソリンスタンドなど多くの選択肢があります。また、自分で運輸支局・軽自動車検査協会に持ち込むユーザー車検もあります。

車検にかかる費用はユーザー車検を除けば、検査をするための点検検査料金と部品交換などの整備費用、法定費用が合算されたものですが、整備費用を含まなくても軽自動車は4万~7万円前後、小型・普通自動車は重量によって異なりますが5万~12万円と大きな価格幅があります。

もし料金に不安があれば、広告やホームページに車検料金を車種別で提示している所に依頼するのが良いでしょう。部品交換が必要な際は、事前に見積提示してもらえるサービスがあると安心できます。

車検にかかる時間は、ディーラーに依頼した場合で最短1日、整備工場では1~2日、場合によっては1週間くらいかかる場合も有ります。ただ、車検のみを専門に行う車検専門店では、1日かからず1時間くらいと待っている間に完了し、乗って帰れる店舗も有ります。

日常生活で車が必須な方は、車検の所要時間が短い店舗や工場を選ぶのがおすすめです。

車検業者の違いについては「車検業者に違いはあるの?比較のポイントを解説」で、わかりやすくご説明しています。

車検が切れた際の罰則

車検が切れた自動車自体には罰則が課せられませんが、車検が切れた自動車で公道を走ると、道路運送車両法違反となり、違反点数6点と30日間の免許停止処分が下されます。

状況によっては同法108条で定められている通り、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰則が課される可能性もあるので、意図せぬ車検切れを起こさないように注意しましょう。

万が一車検が切れている自動車を動かす場合は、牽引やレッカー、臨時運行許可証制度(仮ナンバー)を利用して、公道を移動する必要があります。