Column 速太郎コラム

車検時にブレーキオイル、オートマオイル、クーラント液(冷却水)は必ず交換・補充が必要か?

2022.10.19
車検時の交換・補充が必要なものとは

車検前の見積もりで、ブレーキオイル・オートマオイル・クーラント液の交換・補充を勧められるケースがあります。整備士に「変えた方が良い」「補充した方が良い」と言われると、車検が通らないのではと不安になる人もいるでしょう。
本記事では、それぞれについて、「車検で必須項目か」「どのようなトラブルがあるのか」「交換の目安」を紹介します。
それぞれの役割を知り、車検で交換が必要かどうかを判断してください。

車検時にブレーキオイルの交換は必須?

ブレーキオイルは、ブレーキを適切に作動させるために必要なオイルですが、車検時に交換を提案された場合、交換しなければならないのでしょうか?
ブレーキオイルの概要や交換の目安を紹介します。

ブレーキオイルのみで車検不合格とはならない

車検では、ブレーキそのものの動作・効き具合が検査対象ですが、ブレーキオイルの状態についての基準はありません。(ただし、ブレーキオイルの漏れは車検不合格です)
そのため、ブレーキオイルが劣化しているからといって「車検に通らないのでは」と心配する必要はありません。
ただし、ブレーキオイルは適切なタイミングでの交換が必須です。以下の目安を参考に車検時に交換しておけば、次の車検まで交換する必要はなくなるでしょう。

ブレーキオイルの劣化により懸念されるトラブル

ブレーキオイルの交換が必要なのは、劣化した状態で放置するとブレーキが効かなくなるためです。
ブレーキは、ブレーキパッド・ブレーキシューを押さえるピストンをブレーキオイルの圧力で押し出して効く仕組みになっています。ブレーキは作動時にかなりの熱が発生します。ブレーキオイルが劣化するとこの熱でブレーキオイルが沸騰したような状態となり、ブレーキペダルを踏んでもブレーキが効かなくなります。特に、ブレーキを多用しがちな長い下り坂で発生します。
また、劣化したブレーキオイルはブレーキの金属部品を錆び付かせたり、ゴムパッキンの劣化を引き起こし、ブレーキオイル漏れの原因ともなります。
ブレーキのコンディションは、車の安全性を大きく左右します。ブレーキオイルが劣化したまま、車に乗るのは非常に危険です。

ブレーキオイルを交換する目安

ブレーキオイルを交換する目安として、以下の二つのタイミングが挙げられます。

●メーカーの指定交換時期(初回3年目、以降2年ごと)
●ブレーキオイルを抜く必要があるブレーキ修理の際

エンジンオイルなどは走行距離も交換目安となりますが、ブレーキオイルはメーカーの指定交換時期が上記のように年数で定められているため車検ごとには交換が必要と覚えておくと良いでしょう。
またブレーキオイルの状態も重要です。一般的に新品のものは黄色なので、黒や茶色に濁ってきたら酸化して劣化していると考えられます。中古車の購入などで前回の交換時期が不明な場合は早めに交換された方がいいでしょう。
上記の目安を考えれば、車検時にブレーキオイルを交換することは理にかなっています。

車検時にオートマオイルの交換は必須?

オートマオイルとは、AT(オートマチックトランスミッション)車にのみ使用されるオイルです。車検時に交換を勧められた場合、応じるべきかどうか考察します。

車検の必須検査項目ではない

オートマオイルが劣化しているからといって、車検不合格とはなりません。(ブレーキオイル同様オートマオイル漏れは車検不合格となり修理が必要です)
ただし、オートマオイルの劣化により走行に悪影響が出ている場合は、修理と併せて交換が必要となる場合もあるでしょう。

オートマオイルの劣化による懸念されるトラブル

オートマオイルは、オートマチックトランスミッションの潤滑油的な存在です。動力の伝達・シフト制御・トランスミッションの洗浄・冷却という役割も担っており、AT車にとっては非常に重要といえます。
劣化した状態で乗り続けた場合、以下のような不具合が懸念されるでしょう。

●加速が悪くなる
●燃費が低下する
●スムーズに発進できない
●シフトショックが大きくなる
●変速がスムーズにできなくなる
●最悪、走行不能となる など

オートマオイルを交換する目安

オートマオイルを交換する目安は、車種・メーカーによって異なります。10万kmが指定交換時期となっている車などもありますが、オートマチックトランスミッションの故障は高額な修理費用がかかる場合が多く、一般的にはトラブルを防止するため2~3万kmごとの交換が勧められています。
最も避けたいのは、6~7万kmくらい走ってから、思い立ったようにオートマオイルを交換することです。かなり走行距離が伸びた状態でオートマオイルを交換すると、かえってトランスミッション内部の不具合が起こりやすくなります。
また、上記のようなトラブルが発生してからオートマオイルを交換しても症状は治らない場合が多いため、症状がなくても定期的に交換することがトラブル防止には有効です。
オートマオイルの交換時期は、自分で判断するのは非常に困難ですが、定期的に必要と考えると「車検ごとに交換する」と決めておくのも良いかもしれません。

車検時にクーラント液の交換・補充は必須?

クーラント液は、エンジンの熱を下げる役割を担う冷却水です。車検時に指摘された場合、交換・補充した方が良いのでしょうか。車検時のクーラント液の扱いや補充の目安を紹介します。

車検の対象には含まれない

クーラント液自体の状態も、車検の検査項目には含まれません。(こちらも漏れがある場合は修理が必要です)
ただし、車のコンディションをベストな状態に保つには、適宜交換や補充が必要です。

クーラント液の不足・劣化により懸念されるトラブル

クーラント液はLLC(ロングライフクーラント)とも呼ばれ、ラジエーターとエンジン内部を循環してエンジンの熱を下げています。劣化したり少なくなったりした状態で走行すると、エンジンの熱が下がりません。また、クーラント液にはエンジン・ラジエーター内部の防錆の役割もあり、劣化したクーラント液では冷却水通路の錆び付きが発生し、これもエンジンの熱が下がらない原因となります。
最悪エンジンがオーバーヒートを起こし、走行不能となるでしょう。
万が一走行中にオーバーヒートを起こした場合、大事故につながるリスクがあるため注意が必要です。
また、クーラント液には冬季の冷却水通路の凍結防止の役割もあります。特に、冬季の気温低下が大きい地域で使用する場合も注意が必要です。

クーラント液を交換・補充する目安

クーラント液の交換目安は、以前は初回3年、以降2年ごととされており車検時に交換するのが一般的でした。現在の車はスーパーLLCなど長寿命クーラントが新車時から使われており、車検ごとの交換は必要なくなっていますが、古い車などで通常のクーラント液の場合は車検ごとの交換が基本です。また、車検で整備士に指摘された場合は、ひとまず交換した方が、オーバーヒートのリスクは低くなります。
一般に、きれいな状態のクーラント液は、水色・ピンク色といった濁りのないきれいな色をしています。ボンネットを開けてみたときにクーラント液が茶色くなっていたり黒ずんでいたりするのなら、劣化している証拠です。
早急にディーラーや整備工場・自動車用品店などで交換を依頼しましょう。
また、走行中にメーター内の水温計の針が「H(HOT)」に寄っている場合は、エンジンの温度が規定以上になっているということです。クーラント液が不足している・劣化している恐れがあるため、そのまま走行はせず早めに車を点検してもらう必要があります。

車検時にブレーキオイル、オートマオイル、クーラント液は交換した方が安心

ブレーキオイル・オートマオイル・クーラント液は、状態が悪いという理由だけで車検に不合格とはなりませんが、車のコンディションを良好に保つ上で重要な役割を果たしています。
交換の手間・コストを惜しむと、より大きなトラブルにつながるかもしれません。整備士から交換・補充を勧められた場合は、ひとまず応じた方が安心です。車検で車のコンディションを確認し、安全・快適なドライブを楽しみましょう。