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ディーゼル車の車検の注意点は?ガソリン車との違いや点検整備のポイントを解説

2023.09.04

ディーゼル車が車検を受ける場合、排気ガス検査はガソリン車のCO/HC検査ではなく黒煙検査かオパシメータ検査を受けることになります。この黒煙検査やオパシメータ検査のためディーゼル車はガソリン車よりも車検に落ちやすいと言われます。本記事では、ディーゼル車の車検を受けるときの注意点や、日常的な点検整備のポイントを分かりやすく解説します。

ディーゼル車は車検に落ちやすい?排気ガスの黒煙に注意

ディーゼル車を運転していて、排気ガスに黒煙が混じっていたら注意が必要です。一般社団法人日本自動車販売協会連合会(JADA)の統計によると、2023年6月のディーゼル車の販売台数は12,830台で、燃料別販売台数(乗用車)全体の5.7%を占めています。(※)まだまだ根強い人気があるディーゼル車ですが、車検を受けるときの注意点を知っておきましょう。

ディーゼル車の黒煙は、燃料に含まれる炭素成分が固まった粒子状物質(PM)の一種です。ディーゼル車の車検では、黒煙による汚染度、もしくは光吸収係数が基準値をオーバーすると不合格となり、再検査が必要になります。ディーゼル車の車検は、ガソリン車と排気ガスの測定方法が違うため、自身で運輸支局に車を持ち込んで行うユーザー車検の場合は注意が必要です。

ガソリン車とディーゼル車の車検の違い

ガソリン車とディーゼル車の車検の違いを解説します。ガソリン車もディーゼル車も、車検の際に排気ガスの成分検査を行います。ガソリン車の場合は、CO/HCテスターを用いた排気ガス検査を受けますが、ディーゼル車は車種に応じて黒煙検査かオパシメータ検査のいずれかを受ける必要があります。

ここでは、ガソリン車とディーゼル車の車検の違いや、黒煙検査・オパシメータ検査の特徴を説明します。

ガソリン車は排気ガス検査を受ける

ガソリン車の車検には、道路運送車両の保安基準(第31条)により、排気ガス検査(排ガス検査)の項目があります。(※)排気ガス検査では、CO/HCテスターと呼ばれる機器を使用し、排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の濃度が基準値をオーバーしていないかを確認します。

一方、ディーゼル車の車検ではガソリン車のような排気ガス検査を行いません。ディーゼル車の排気ガスにも、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)などの有害成分は含まれていますが、ガソリン車に比べるとその量は少ないため、ディーゼル車の車検では別の基準で排気ガスを測定します。

ディーゼル車は黒煙検査かオパシメータ検査を受ける

ディーゼル車の車検では、黒煙検査で黒煙による汚染度を測定するか、オパシメータ検査で光吸収係数から軽油や潤滑油の未燃焼成分を含んだ汚染度を測定します。ガソリン車の排気ガス検査と違って、アクセルを踏み込んで排気ガスを測定するのが特徴です。

平成19年9月1日以降に自動車の型式を指定した車種はオパシメータ検査の対象です。以下の3つの条件のいずれかに当てはまる場合、黒煙検査ではなくオパシメータ検査を受ける必要があります。(※)

1. 車検証の備考欄に「オパシメータ測定」と記載されているもの
2. 車検証に記載されている型式指定番号が、「16000」番以降のもの(特殊自動車を除く。)
3. ポスト新長期規制適合を示す排出ガス記号(3桁の排出ガス記号であって1桁目がL、F、M、RまたはS)が付されているもの

黒煙検査の場合、3回の測定による平均値が黒煙による汚染度の基準値を下回っていれば合格です。オパシメータ検査では、2回の測定までの時点で光吸収係数が閾値を下回った場合、その時点で合格になります。そのため、黒煙検査は3回行いますが、オパシメータ検査では1回で合格する可能性もあります。(※)

ディーゼル車の点検整備のポイント

車検に落ちないためには、ディーゼル車の日常的な点検整備は欠かせません。ディーゼル車の点検整備のポイントは以下の4つです。

● エアクリーナーを交換する
● 噴射ポンプを交換する
● 尿素水溶液(アドブルー)を補充する
● 添加剤を燃料タンクに注入する

エアクリーナーを交換する

ディーゼル車のエアクリーナーの状態を確認して、必要であれば交換しておきましょう。エアクリーナー(エアフィルター)は、エンジンに吸入する空気をろ過し、異物やホコリを取り除くフィルターです。エアクリーナーが汚れていたり、詰まっていたりすると、ディーゼルエンジンの不調の原因となります。排気ガスから黒煙が出る場合は、まずエアクリーナーの状態を確認してみましょう。

エアクリーナーは比較的安価な部品のため、点検整備の際には汚れ具合や走行距離などを目安に、定期的に交換することをおすすめします。

噴射ポンプなどを交換する

エアクリーナーを交換しても黒煙が出る場合は、噴射ポンプ(燃料噴射ポンプ)や噴射ノズルなどの高圧燃料部品の交換が必要な可能性があります。噴射ポンプや噴射ノズルはポンプの圧力を利用して、ディーゼルエンジンのシリンダー内に燃料を高圧で送り出す装置です。噴射ポンプや噴射ノズルが経年劣化を起こしている場合、ディーゼルエンジンの動作に不具合が生じ、排気ガスに黒煙が混じることがあります。

注意点としては、ホームセンターなどで入手できるエアクリーナーと違って、噴射ポンプや噴射ノズルの交換は高額な費用がかかることです。万が一、噴射ポンプなど全ての交換が必要な場合、修理費用が高額になるため、新しい車への買い替えも視野に入れましょう。

尿素水溶液(アドブルー)を補充する

ディーゼル車の整備においては、尿素水溶液(アドブルー)を補充しておくことも重要です。
ディーゼル車は、車種によっては排気ガスを浄化する尿素SCRシステムが搭載されています。尿素SCRシステムとは、排気ガスにアンモニアガスを噴射し、有害物質を除去する技術です。尿素SCRシステムが搭載された車両は、最新のディーゼル車であることがほとんどのため、排気ガスに黒煙が混じるケースはそれほど多くありません。

しかし、尿素SCRシステムに必要な尿素水溶液(アドブルー)が不足している場合、排気ガスの有害物質を除去できなくなってしまいます。また、完全になくなってしまうとエンジンがかけられなくなります。尿素SCRシステムの搭載車を運転している場合は、なくなる前に尿素水溶液を補充しましょう。

添加剤を燃料タンクに注入する

ディーゼル車専用の添加剤を燃料タンクに注入するのもポイントの一つです。添加剤の適切な使用により、エンジン内部の洗浄効果などが期待できるため、エンジン自体のコンディションの維持につながる可能性があります。なお、添加剤は自動車用品店で購入が可能です。一部ディーラーでは純正品も販売しています。

ただし、この方法は一次的な改善にはなっても根本的な問題の解決にはつながらないとする意見もあります。その後も黒煙が収まらない場合はエンジンの点検整備が必要です。

ディーゼル車の車検の注意点を知り、定期的な点検整備を

ディーゼル車の車検は、ガソリン車の車検といくつか違う点があります。大きな違いは、排気ガス検査でガソリン車のCO/HCテスター検査の代わりに、黒煙検査かオパシメータ検査を受ける点です。ディーゼル車の排気ガスに黒煙が混じっている場合は、車検に落ちてしまう可能性があるため、エアクリーナーの交換などの対策を行いましょう。ディーゼル車を運転している方は、日常的に点検整備を行うことが大切です。