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OBD車検とは?普通の車検との違いやメリットを解説

2023.07.19

2024年10月から新たな検査項目が加わった車検が開始されます。(※)自動車に搭載されたシステムを電子的に検査するOBD車検(OBD検査)です。OBD車検とは、具体的にどのような検査を指すのでしょうか。また従来の車検との違いは何でしょうか。

本記事では、OBD車検の仕組みや従来の車検との違い、OBD車検の導入が決まった背景、OBD車検を受けるメリットを分かりやすく解説します。

OBD車検とは?新しく始まる車検の仕組みを解説

OBD車検とは自動車の電子的な検査のことで、OBD検査とも呼ばれます。(※)OBD車検とは、自動車に搭載されたOBD(On-Board Diagnostics)を利用し、自動運転技術などに使われる電子制御システムの動作を確認する検査です。OBD車検の仕組みや、OBDの役割を簡単に解説します。

そもそもOBD(On-Board Diagnostics)とは?

そもそもOBDとは、日本語で車載式故障診断装置といい、自動車に搭載された電子制御システムの状態を監視する装置です。主な電子制御システムとして、エンジンの燃料噴射装置、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバックなどを監視してきましたが近年、自動ブレーキ、駐車支援システムなどの自動運転技術・運転支援技術が発達しそれらのシステムの監視も必要となってきました。こうした装置はハイブリッド車や自動運転車など近年発売された自動車の多くに搭載されているため、定期的に検査しなければなりません。

電子制御システムが故障した場合、OBDに故障コード(DTC)が記録されます。自動車メーカーごとに定められた故障コードや、DTCの読み出しに必要な技術情報(ECU情報)は、自動車技術総合機構で一元管理され、全国の車検場や整備工場に提供されます。

OBD車検は電子制御システムの動作を確認する検査

OBD車検はこのOBDの仕組みを利用して、自動車を電子的に検査する方法です。OBD車検では、自動車のOBDに専用のスキャンツール(法定スキャンツール)を接続し、故障コードを読み取ります。自動車の状態によっては、保安基準を満たさない故障を表す特定DTCが検出されることがあります。特定DTCが検出された場合、その車両は不合格となり、必要な点検・整備をした後で再検査を受けなければなりません。

OBD車検と普通の車検の違い

OBD車検と普通の車検の違いは、OBDと法定スキャンツールを使い、電子制御システムの不具合を客観的に検査する点にあります。従来の車検は、主に目視やテスターを用いて電子制御システムを検査しており、機能確認が不十分でした。

“現在の自動車の検査(車検)は、外観や測定器を使用した機能確認により行われているが、自動運転技術等に用いられる電子装置の機能確認には対応していない。”

OBD車検はこうした課題を解決するための検査手法です。法定スキャンツールでOBDの故障コードを読み取ることで、従来の車検では確認できない不具合を検出できる仕組みになっています。また従来の車検と比較すると、対象車両や対象装置が異なります。例えば、2021年以前に発売された車両は、OBD車検の対象にはなりません。OBD車検の対象車両と対象装置をそれぞれ詳しくみていきましょう。

OBD車検の対象車両

国土交通省によると、OBD車検の対象車両は2021年以降の新型の乗用車、バス、トラックです。(※)ただし、輸入車の場合、2022年以降に発売されたもののみが対象となります。

OBD車検の対象装置

OBD車検の対象装置は、大きく3つに分けられます。(※)

種類
運転支援装置 アンチロックブレーキシステム(ABS)、横滑り防止装置(ESC)、ブレーキアシスト、自動ブレーキ、車両接近通報など
自動運転機能 自動車線維持支援、自動駐車、自動車線変更など
排ガス関係装置 発散防止装置など

従来の車検では目視で検査できない電子装置であっても、OBD車検なら機能確認を行うことが可能です。

OBD車検の導入が決まった背景

なぜOBD車検の導入が決まったのでしょうか。国土交通省は、OBD車検を導入した理由を以下のとおり説明しています。

“衝突被害軽減ブレーキ等の自動運転技術については、近年、軽自動車を含む幅広い車両への搭載が進んでおります。これらの技術は、交通事故の防止に大きな効果が期待される一方、故障時には誤作動等により事故につながるおそれがあることから、使用時においても、確実に機能維持を図ることが重要です。
このため、令和6年10月から、自動車の検査(車検)において、衝突被害軽減ブレーキ等の自動運転技術等に用いられる電子制御装置の目に見えない故障に対応するための電子的な検査を開始することとしております。”

技術の発展に伴って、新型の車両には自動ブレーキを始めとした自動運転技術が搭載されるようになりました。こうした電子制御システムは、事故の防止に役立つ一方で、故障や不具合が目に見えづらいという欠点を抱えています。電子制御システムが誤作動を起こした場合、重大な事故につながるかもしれません。そのため、新しくOBD車検を取り入れ、電子制御システムの故障を未然に防ぐための検査が導入されました。

OBD車検の開始時期は2024年10月から

OBD車検の開始時期は、2024年10月1日からです。ただし、輸入車に限り、2025年10月1日からOBD車検が始まります。(※)なお、前述のとおり、2021年以前に発売された車両(輸入車の場合は2022年以前)は、2024年10月以降もOBD車検の対象にはなりません。

OBD車検を受ける2つのメリット

OBD車検を受けるメリットは以下の2つです。

● 電子制御システムの故障原因が細かく分かる
● 人為的な見落としを防止できる

OBDが記録する故障コードを利用することで、電子制御システムの故障原因が細かく分かります。また、OBD車検では、OBDの故障記録を直接スキャンします。そのため、人為的な見落としが発生しにくいのも特徴です。

1. 電子制御システムの故障原因が細かく分かる

OBDが記録する故障コードは、国際標準規格(ISO15031-6)や米国自動車技術会(SAE J2012)などの規格に基づいて、細かく分類されています。例えば、先頭がBの故障コードはエアバッグやシートベルト、エアコンなどボデー系の不具合、先頭がCの故障コードはブレーキ、電動パワーステアリングなどシャシ系の不具合です。(※)

故障コードの先頭

故障箇所

B

ボデー系(エアバッグ、シートベルト、エアコンなど)

C

シャシ系(ブレーキ、電動パワステ、車両安定制御装置など)

P

パワートレイン系(エンジン、トランスミッション、HVバッテリなど9

U

ネットワーク系(各ECU間の通信など)

さらに、0から9またはA~Fの英数字を使って、故障の区分や詳細を示します。つまり、故障コードの分類によって、電子制御システムの故障原因を詳しく把握できるようになっています。

2. 人為的な見落としを防止できる

従来の車検では、主に検査員の目視やテスターを使った手作業で車両を検査していました。OBD車検なら、OBDが検知した故障の記録をスキャンし、不具合がないかを客観的に確認できます。人為的な見落としを防止し、機能確認の精度をより高めることが可能です。

OBD車検と普通の車検の違いを正しく理解しよう

OBD車検は、自動車に搭載された車載式故障診断装置を利用し、電子制御システムに故障がないかチェックする検査です。普通の車検と違い、2021年以降に発売された新型の乗用車、バス、トラックが対象となります。また、検査対象となるのは、運転支援装置、自動運転機能、排ガス関係装置などの装置です。OBD車検は、2024年10月1日からスタートします。OBD車検の仕組みや普通の車検との違いを正しく理解しましょう。